(1)排出事業者責任
① 産業廃棄物の大原則
廃棄物処理法11条1項により「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」と定められています。「処理」とは、保管や収集運搬、中間処理、最終処分や再生までが含まれていますので、最後まで自らの責任で処理することを求められています。
排出事業者が自ら、収集運搬・中間処理・最終処分を行うことは非常に少なく、産業廃棄物処理業者に処理を委託しているのが現実です。しかし、この大原則がある以上、委託した処理業者が廃棄物処理法違反を行った場合の責任は、排出事業者も負うことになってしまいます。
② 注意するポイント
排出事業者として、産業廃棄物の取扱いで注意すべきポイントは、次の3つです。
- 発生時の注意(産業廃棄物保管基準)
- 委託前の注意(委託基準)
- 委託時の注意(マニフェスト)
(2)産業廃棄物保管基準
廃棄物処理法12条2項により、排出事業者に対して、その産業廃棄物が搬出されるまでの間、生活環境の保全上支障のないように保管することを義務付けています。
<主な基準>
- 周囲に囲いを設けること
- 所定事項が記載された掲示板を設けること
- 産業廃棄物が飛散、流出、地下浸透しないようにすること
- 保管の高さを守ること(屋外で容器を使用しない場合)
- ねずみ・蚊・はえ等を発生させないこと
「石綿含有産業廃棄物」「水銀使用製品産業廃棄物」「特別管理産業廃棄物」を保管する場合、特別な基準が設定されています。
(3)委託基準
廃棄物処理法12条5項により、産業廃棄物の運搬や処分を他人に委託する場合には、「運搬については産業廃棄物収集運搬業者」に、「処分については産業廃棄物処分業者」にそれぞれ委託することを義務付けています。
<委託基準のポイント>
- 収集運搬業者・処分業者のそれぞれと契約している
- 委託契約書にはそれぞれ処理業者の許可証のコピーが添付されている
- 記載事項は全て正確に記入されている(契約日、契約期間、廃棄物の種類・数量、金額、中間処理の場合は処理後の処分先等)
- 委託契約書は契約期間終了後5年間保存している
(4)マニフェスト
廃棄物処理法12条の3により、排出事業者は、産業廃棄物を処理委託する際に法令で定める事項(法定記載事項)を記載したマニフェストを交付することを義務付けています。
マニフェストは、「紙マニフェスト」と「電子マニフェスト」の2種類が用意されています。
電子マニフェストには以下のメリットがあり、2023年11月現在、電子マニフェスト運用事業者は全体の80.1%にまで達しました。
<電子マニフェストのメリット>
- 法定記載事項の未記載や未返送のチェック漏れなどのミスを防止できる
- 紙マニフェストの保管が不要
- 毎年報告するマニフェスト交付状況報告書の提出が不要
制度の概要については、以下のリンクをご確認ください。
(5)罰則規定
環境法令違反は〝廃棄物処理法違反〟が大多数を占めています。廃棄物処理法違反には5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金などの厳しい罰則規定もあります。
廃棄物処理を委託した相手が不法投棄・不法処理をしたことが発覚すると、警察の捜査や行政の調査は排出事業者にも及びます。その際、排出事業者責任を全うしていなかった場合、排出事業者も芋づる式に検挙されてしまいますので、注意が必要です。
弊所では、廃棄物処分業許可を取りたい事業者に対するサポートのみではなく、ごみを出す側(排出事業者様)の皆様へのサポートも行っております。
廃棄物の処理に不安をお持ちの事業者様につきましては、弊所までご相談ください。